おてがみ

先日、父が言いました。

「面白いものを見つけたぞ」

持ってきたのは、私が小さい頃に書いたおてがみ。
まぁ、おてがみと言っても、
そこは字を覚えたばかりの幼ない手が書いたものです。

「じょうず」が「ぢょうず」だったり、「く」の向きが反対だったり、
逆に今となっては書けない文字が躍る、おてがみ。

早速読んでみました。
声に出して読みたい日本語。

約25年ぶりに音読したおてがみには、
『ひっこし』に寄せる想いがしたためてありました。

私が保育園に通っていた頃は、
家族で父の会社の社宅団地に住んでいました。
そして小学校に上がる頃、今の家に引っ越してきました。

団地から一軒家へ。
子供心にセンセーショナルな出来事だったのでしょう。
おてがみの中にいたのは、引越しを間近に控えて、ワクワクの私。
「はやくひろいおうちにいきたいな」
「ちかくのこうえんであそびたいな」

書いたことなど全く記憶にないおてがみ。
自分の文字のはずなのに、自分のことと思えない。
何とも言えない不思議な感覚。。。

音読を聞いていた母が、思わず涙ぐんだ一文がありました。
「ひろいおうちにひっこしたら
  おとうさんやさしくなるかな 
   おかあさんもやさしくなるかな」

特別に厳しかったわけではないけれど、
いいことはいい。だめなことはだめ。
かなりはっきりしていた両親。
私はもっと優しくしてほしいと思っていたのかしら。

子供の言葉はすごい。
限りなく素直で、飾らない言葉。
そこから伝わってくる想いは、どんな文豪の言葉より強力。

たくさんの言葉を知っている大人より、
少ない言葉の中で精一杯自分を表現している子供のほうが、
表現力はうわてなのかもしれないねぇ。

そんなことをしみじみと思ったりして。

でも、このおてがみを書いた私に伝えたい。
引っ越して25年が経つけれど、
「てれびきょくでトムとジェリーにあう」
という経験はまだしていないよ。。。


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