第5話:林社長だけが知らなかったリーダーズカレッジ

『林社長だけが知らなかったリーダーズカレッジ』

  自分の存在価値が分からなくなったわたしは、とにかく自分の周囲の人と違う人と出会いたかった。全く、知らない人と話をしてみたかった。そんな時に吉本興業が新しい本社ビルを建てた。そこには、とっても素敵な会議室も作られた。

 そんなある日、当時吉本興業の専務だった富井さんから電話が掛かってきた。

「会議室を使って、セミナーか何か企画したらどうや」

ピーンと来た。いろんな人が一緒に学ぶ場所にしょう。みんなが広い視野を持てるようにしよう。パソコン通信で知り合ったメンバーの力も借りて、講師も揃えた。当時、吉本興業の社長だった中邨氏は、

「ええこと思いついたなあ」

と、喜んでくれた。常務だった木村さんは、ヒントをくれた。

「やっぱり、世間を『あっ』と、言わせたほうがいいから、『総務もお金を儲けます』なんていいんじゃないか」

確かに、それならマスコミも食いついてくれそう。


「さすが、吉本興業。総務部もお金儲けを考える」
「吉本興業が人材育成」


ということで、マスコミは食いついてきた。各誌に取り上げられて、年間の受講料15万円の「よしもとリーダーズカレッジ」の定員の40人は、あっと言う間に埋まった。わたしは、やりたいことが見つかって、すごく楽しかった。


けれど、この時、わたしの知らないところで、とんでもないことが起こっていた。吉本興業の役員みんなが応援してくれて始めたはずの事業だったはずなのに、このことを当時の副社長林氏だけがこのことを知らなかった。と、いうか、ここが吉本らしいところで、みんなが林氏にだけ言うのを忘れていたらしい。

「わしは、吉本興業が教育なんて大反対だ」

林副社長のこの一言が発端で、吉本興業の一部の人からの風当たりが急に強くなった。わたしに関わって無いふりをする人も出てきた。でも、わたしは、後に引き下がれなかった。集まった40人をどうするかに必死だった。


つづく

第6話:40人があっという間に・・・