第6話:40人があっという間に・・・

『40人があっという間に・・・』

  リーダーズカレッジの1期生の定員40名はあっという間に埋まった。でも、参加してきたメンバーの多くは、「吉本興業という会社と繋がりを持ちたい」「吉本興業と仕事をするきっかけにしたい」という考えだった。わたしの「感じて、興味を持って動く人づくり」という思いなんてほとんどのメンバーにとって余計なお世話だった。たった月1回の1年間のカリキュラムなのに、いきなり暗礁に乗り上げた。

 必死で集めたステキな講師陣だったのに、みんなの反応はいまいち。「吉本のトップといつ会わせてくれるんですか?」などと言い出すメンバーも出てきた。月1回の講義だったのに4月に始まって、7月には、40人いたメンバーが半分しか出席してくれない状態になっていた。「なんで、こんなにステキな講師を集めてるのに・・・」。「わたしが、人材育成なんて思い上がりだったのかなあ?」どうしていいか分からなかった。


 でも、じっとしているのも悔しい。とにかく休んでるメンバーに会いに行った。ほんとにめちゃめちゃ言われた。

「吉本がやるって聞いてたたから、もっとおもしろいと思ってたのに・・・」
「別にすごい人の話なんて聞きたくないんだよね」
「仕事のメリットが無いんだよね」

なんでここまで言われなきゃならないんだろうと思うような言葉もいっぱい言われた。


 そんな中で、スポーツ振興という会社にいた28歳の井口くんが言ってくれた。当時、吉本興業は、スポーツ振興という会社のゴルフの会員権を持っていた。

「僕、会社で、副社長に言われて来ただけだけど、いろんな人と出会えるっていいですよね。もっと、楽しい企画を考えて、楽しみましょうよ」

と、彼が言ってくれた。「楽しみましょう」この一言が、わたしに少しだけ勇気をくれた。「そうだ、楽しく学べる場所にしょう」この頃から、わたしは、参加型の研修にこだわりだした。楽しくてためになって元気になる研修にこだわりだした。みんなの意見もどんどん聞くようにした。他の研修の情報も取って、できるだけ取り入れた。


 何人かは、途中からリーダーズカレッジに来なくなった。でも、残った20名ほどは、わたしにどんどん意見を言ってくれるようになって、自分たちで企画をしてくれるようになった。それどころか、一年が終わった3月には、「ほんまに、大谷さんだけやったら頼りないから、卒業しても、僕たちが手伝ってあげるよ」とまで言ってくれた。卒業式に、わたしは、嬉しくて泣いてばかりいた。


つづく

第7話:捨てるドキドキ、始めるワクワク